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ローカルトランスフォーメーションを加速するシン・人材 活用術~イベントレポート~

地方に暮らしながら東京の会社に就職してリモートワークができるこの時代。地方のスタートアップにとって「福岡住みやすいよ!」といううたい文句だけでは人材獲得は難しくなってきています。

2021年9月10日(金)、福岡市スタートアップカフェの主催で新しい採用のあり方や地方で事業をする意味を考えるイベントが開催されました。代表の下岡が、福島県でMaaS事業やアウトドアレストランツアーなどの新しい取り組みを続ける郡山観光交通さんと共に登壇。この記事ではその様子をイベントレポートとしてまとめています。

イベント概要

日時:2021年9月10日(金)13:00〜15:00
会場:オンラインセミナー(zoomウェビナー)
登壇者:
  郡山観光交通株式会社 代表取締役 山口 松之進 氏
  株式会社クアンド 代表取締役CEO 下岡 純一郎 
コーディネーター:
  株式会社プレイノベーション 代表取締役CEO 菅家 元志 氏   
  スタートアップカフェ 人材マッチングセンター相談員 佐藤 智美 氏
主催:
  スタートアップカフェ(福岡市)
  こおりやまDXプラットフォーム(郡山市)

第一部「地方ならではの社会課題とは?」
 ・福岡・福島の例から見る、地域特性やビジネスにおけるポテンシャル
 ・ローカルトランスフォーメーションの課題と可能性
 ・問題解決のための新規事業 事例紹介

 第二部「問題解決のためのチームづくり」
 ・新規事業の展開における仲間集めの苦労
 ・柔軟な働き方、関わり方でのチームづくり事例紹介
 ・地方のスタートアップ企業・地場企業がとるべき人材活用戦略

問題提起

佐藤さん(コーディネーター)
今日は①コロナで加速した働き方の変化に応じて、採用のアプローチの仕方を変える必要がある。②従来のリソース内製化(みんな正社員)だけではなく、副業やフリーランス人材の活用や地場企業とスタートアップとの事業提携などにも目を向けていこう、ということを一緒に考えていきたいと思っています。

今まで地方企業は物価の安さや住みやすさなど環境の良さを売りに人材を獲得することも多かったですが、近頃はリモートワークが可能になって地方に住みながらも東京の企業に転職するという話をよく耳にするようになりました。これって人口は増えても、地方の働き手は減っていくんじゃないか?という危機感を持ったのです。

これからは環境ではなく、仕事のおもしろさで訴求していく必要があり、かつ東京にはない地方ならではの課題解決という面白さを見せていかなければと思っています。

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また、地方の老舗企業がいきなり東京のエンジニアを一名正社員として採用しても、老舗企業にはITの理解が進んでおらず「無人レジ一人で作って?」というような無茶振りが起き、結局エンジニアも早期離職してしまうというような失敗談も聞きます。こういったことを防ぐために、地場のスタートアップが間に入ったり、採用形態も業務委託から始めて徐々に移住を考えたりと「関係人口」を増やして、段階的な働きかけをしていくことも重要な観点です。

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事業紹介

山口さん(郡山観光交通)
我々はタクシー事業からスタートし私で3代目となる福島県郡山市の企業です。グループ会社は7社ほどありバスや介護、運送、小売りなど様々な事業をしていますが、その中でも今注力しているフードキャンプ(アウトドアレストランツアー)についてご紹介します。

まず生産者さんの案内で収穫体験を行い、その後青空の元シェフが腕をふるった料理を味わうという福島の食と人と文化を丸ごと味わえる旅です。これまで12回開催していますが、リピーターが多く、九州など県外からも多くのお客様にお越しいただいています。

生産者の方にとっては、自分の野菜がシェフによって料理され、それを食べて幸せになる消費者の顔を直に見られる「夢のような機会」。シェフにとってはいい食材を活かしていかにおいしいものをつくるのかという「原点に立ち返る機会になっている」という言葉をもらいました。生産者やシェフを一日拘束するわけですが、長い目で見た時にそれが価値に変わるように、10年かけてお客様も含め四方両得になる事業を目指しています。

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下岡(クアンド)
クアンドは福岡のスタートアップで「地域産業・レガシー産業のアップデート」をミッションとしています。私は北九州という土地で生まれ育ち、「新日鉄」の産業に街や暮らし、文化が密着した環境で、その街の衰退も感じながら育ってきました。2017年の創業から、地域の産業を新しい時代に合わせてアップデートさせるべく、お客様と新事業を創り出していくDX事業を行ってきました。また、産業の現場に共通した課題であるコミュニケーションに目をつけて、遠隔支援ビデオアプリ「SynQ Remote(シンクリモート)」というプロダクトを提供しています。

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我々のようなスタートアップと地元に根ざした老舗企業さんがパートナーを組むというのは両者にメリットがあると思っています。スタートアップには技術はあっても、業界に対する理解が足りないので浅はかなプロダクトができやすい。一方で老舗企業は業界に対する深い理解がありますが、課題そのものが当たり前になってしまい見えなくなっている。スタートアップの目線で質のいい課題を見つけ、老舗企業の深い業務理解を掛け合わせることで本質的な課題解決が可能になると思います。

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10年かけて両者に価値が生まれるパートナーシップを

菅家さん(コーディネーター)
お二人のお話をうかがって、地域資源や文化を生み出し紡いでいくのはやはり行政ではなく民間企業なんだなと感じましたね。それぞれ事業は全く違いますが、パートナーとなる企業や農家さん、飲食店とビジネスを創っていくことは簡単ではないですが、一度巻き込んでしまえばとても強い力を発揮する「関係人口」としてのつながりができるのかもしれないですね。

とはいえ、地域の内にこもっているだけでは大きな価値にはつながらず、外の地域に向けた戦略も必要になってきますよね。

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山口さん(郡山観光交通)
お客様も全国から来られていますが、それ以外にもまちづくりや農業など様々な文脈での視察にもお越しいただいています。それだけ各地域に課題があるっていうことですよね。ただ観光もすべての地域がやると客の奪い合いになってしまう。ふるさと納税もしかりです。東京から外貨を稼がなくても街が成り立ち、持続可能性を持たせるためには地域が自立しなければならない。そのためにフードキャンプのノウハウは惜しみなく外の地域に伝えていきたいと思っています。

一番大事なのは地元の人が地元の価値に気づくということなのです。なんでもない畑が唯一無二のレストランになる。地元には何にもないと思っていても、ちょっと見方を変えれば素敵な人と場所がある。足りないのは自信だけなんですよね。

下岡(クアンド)
クアンドは「地域」に関して言うと沖縄や台湾などいろんな場所から働く従業員がいますし、出資してくれているVCも海外や東京など様々な地域とのつながりがあります。プロダクトのお客様も全国にいらっしゃいます。ただ我々がアップデートしたいと思っている産業自体はそれぞれの土地に深くひもづくものなので、それが地方で創業した理由ですね。福岡から東京に!ではなく、福岡から世界に出ていくグローバルテックカンパニーを目指しています。

佐藤さん(コーディネーター)
クアンドさんはこれまでDX事業で様々な地場企業とタッグを組まれていますが、お客様や共同で事業を行っていくパートナーを探すとき、どんな企業さんと組んでいけば推進力が生まれやすいですか?

下岡(クアンド)
後から振り返ってみると、パートナーとなってくれたのはオーナー企業が多かったですね。決裁を取るのに時間がかかる非同族企業に対して、オーナー企業ではトップダウンで変えようという意思決定がスピーディーになされ、我々のような何の業績もないスタートアップに賭けてくれたというのがあります。また、戦後創業したのが1代目だとすると、今代替わりの時期を迎えている3代目の経営者は海外で学んだり外の会社で様々な経験を積んだりしているので、ITを取り入れることに積極的であることも大きいですね。

おもしろい事業をやることが最良の採用手段

山口さん(郡山観光交通)
フードキャンプの立ち上げメンバーについては、構想を話した知人から紹介してもらったり、Facebookのつぶやきから採用につながったり、もともとお客さんだった人が「申込がFAXなんてありえない!」とWEBの申込フォームを作ってくれて業務委託でのジョインになったりと、いろんな人の輪からメンバーが増えています。採用に向けて専門の会社に委託するとかいろんな施策がありますが、おもしろい事業に取り組むことが最良の採用手段なんですよね。

菅家さん(コーディネーター)
小手先の手段ではなく、いい事業をしていれば自然と人は集まるというのはいい考え方ですよね。ビジョンに共感してコミットしさえすれば働く場所や働き方は問わないという方針を打ち出している企業も増えていますが、ただ、まだそこまで知名度が上がっていないスタートアップが人を採用するというのは、情熱を伝えたり、いろんな工夫が必要かと思いますがクアンドさんはどんなふうに採用活動されていますか?

下岡(クアンド)
地方のDXやレガシーな産業にITの力をもってアプローチするということに興味がある人はたくさんいます。「東京で働いているけど何か違うんだよな」「地方の産業やスタートアップに興味があるけど、東京にいると詳しくわからないんだよな」というような漠然とした思いのある方に、一歩を踏み出してもらいやすいよう、移住しなくても好きな時に三拠点(東京・沖縄・福岡)で働けるシステムを整えています。

正社員は10名くらいなんですが、同じ数くらい業務委託の方など副業的に協力してくれている人たちがいるんですね。移住しなくても、正社員にならなくてもラフに関わり始めてもらえるというのは両社にとってメリットが大きいですね。その先で正社員メンバーになっていただく道ももちろんあります。

菅家さん(コーディネーター)
副業や兼業というと、タクシードライバーさんは農家との兼業などで働かれる方も多く、そういう意味では古くて新しい業態ですよね。

山口さん(郡山観光交通):
昔から男女全く平等に報酬は売り上げの何パーセントというやり方ですからね。そういうタクシー事業がベースにあるからこそ、障がい者の方でもシングルマザーの方でもその方に合った働き方やできることを探すように面接を重ねてきて、ここまで仲間を増やせたんだと思いますね。

佐藤さん(コーディネーター)
ダイバーシティ&インクルージョンを素で実践してこられたんですね。事業そのものやミッションが共感できる「おもしろい」ものであること、その上で多様な働き方を選択できるということが現在の人材活用のキーワードかもしれませんね。

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今回の注目フレーズ

・環境から仕事のおもしろさの訴求にシフトチェンジ
・副業やフリーランス人材の活用
・関係人口を増やし、事業パートナーを探そう
・10年かけて三方両得、四方両得に
・業界に対する深い理解と質のいい課題でDX
・地域が自立して持続可能性を
・おもしろい事業に取り組むことが最良の採用手段
・東京で感じる「何か違うんだよなあ」という違和感

マッチングイベントのご案内

通常の求人は「〇〇エンジニア」や「セールス担当者」というように職種ごとに作成をしますが、今回のマッチングイベントは「うちの会社はこんなおもしろい事業をしているよ」という軸で行われるそうです。福岡市と郡山市と別々に開催されますので、みなさん要チェックです!クアンドも参加します。
福岡市(企業や事業主の方のエントリー)
福岡市(転職や副業希望の個人の方はこちらから)
郡山市 こおりやまDXプラットフォームmeet up!


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