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【イベントレポート】FGN主催「Stand By」クアンド×COTEN×β Venture Capital<前編>

こんにちは!クアンドnoteチーム2号です。
2024年3月28日にFGN主催の「Stand By」がCIC Tokyo(虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階)で開催されました。

このイベントは「今、福岡とSTART UPする理由がここにある」をテーマに掲げ、これからのスタートアップシーンを展望するプログラムを実施したハイブリッド型で、現地には300名以上の方がご参加いただき、ビッグイベントとなりました。(オンライン含めると400名超)

事業会社や投資家、起業家、スタートアップ支援者など多様なスピーカーが登壇しており、クアンド代表の下岡も、株式会社COTEN羽田さん、モデレーターにベータ・ベンチャーキャピタル株式会社の渡辺さんとともにトークセッションを行いました。

この記事はそのイベントレポートです!3人のトークセッションを各トピックごとにまとめていきます。


◎テーマは「Why Start up? "スタートアップ"が秘める可能性と成長の多様性」

Stand By 公式

「社会にインパクトを与える」というゴールが同じだとしても、そこに至る道のりはさまざま。成長の在り方が多様化する現在、スタートアップのプレイヤーたちは、今どんなことを考えているのでしょうか? 本セッションではスタートアップの成長の姿の多様性、そしてそのポテンシャルについて語っていただきました。(引用:https://growth-next.com/event/standby)

◎登壇者のご紹介

株式会社COTEN 取締役CFO兼CHRO 羽田 隆也
大学卒業後、大和証券SMBC(投資銀行部門)に入社。IPO業務に従事。2012年にラクスル株式会社に参画、事業開発、資金調達、CS部門の立ち上げ等を担当。2014年に大和証券に戻り再び IPO業務に従事し、2018年に独立。複数のベンチャー企業の経営に携わる。2022年2月より現職。
株式会社クアンド 代表取締役CEO 下岡 純一郎
北九州市出身。九州大学/京都大学大学院卒業後、P&Gにて消費財工場の生産管理・工場ライン立ち上げ・商品企画に従事。その後、博報堂コンサルティングに転職し、ブランディング・マーケティング領域でのコンサルティング業に従事。2017年に地元福岡にUターンし、株式会社クアンドを創業。製造業や建設業などの現場向けに、遠隔からプロフェッショナルな判断を可能にするリモートコラボレーションツールSynQ Remote(シンクリモート)を開発・提供。家業の建設設備会社の取締役も兼任する。
ベータ・ベンチャーキャピタル株式会社(旧社名:株式会社ドーガン・ベータ)
代表取締役パートナー 渡辺 麗斗(モデレーター)

静岡市出身。大学で学問としてのベンチャーファイナンスに出会い、そのダイナミズムと地方での展開の可能性に惹かれる。在学中の2012年より「金融の地産地消」を実践するドーガンに参画、後に入社。2017年にベータ・ベンチャーキャピタルをスピンアウトさせパートナーに就任、九州に根ざしたVCを運営している。コワーキングスペース「OnRAMP」や、起業相談窓口「福岡市スタートアップカフェ」にも設立時より関与。

◎多様性?お金の色の話

(モ)渡辺:まず最初のテーマとして取り上げたいのは「多様性」についてです。COTENとクアンドは福岡の中でも変わったスタートアップ、「多様性」枠だと思うんですよね。特にCOTENは日本全体の中でも変わった資金調達方法を選択しましたよね。逆にクアンドは、福岡の会社だけど東京のような資金調達をしている。2社ともにそういう多様さをもっているから今日来てもらっていると思うんですけど、実際、当事者として、外れ値だなと思って活動していますか?

下岡:あまり外れ値だとは思っていません。僕たちのリードの投資家はALL STAR SAAS FUNDというSaaSに特化したファンドで、その他、B Dash VenturesやUB Ventures、あとは金融機関系VCなどに出資頂いている、いわゆる一般的な調達をやっています。一方、同時に福岡の地元VCベータ・ベンチャーキャピタルやF Ventures、地元のオーナー企業に出資頂いているので、そういう意味では少し特殊かもしれません。

下岡:なぜそうしたかというと、福岡ってすごく起業しやすい文化もある一方で、僕らがやっているSaaSはセオリー(確立された方法)が一定数存在して、情報へのアクセスという意味では東京に対してディスアドバンテージもあるんですよね。どうしてもリアルで会える距離にいる方が濃くて新しい情報を得られる。情報を持っている人やネットワークにアクセスして、情報を得ることもすごく重要だと思ったので、東京のファンドやSaaSに強いファンドに出資してもらいました。また、エンジェル投資家には元メルカリで最近newmoを立ち上げた青柳さんや、SmartHR創業者で現在Nstock代表の宮田さん、ビザスク代表の端羽さんなどがいますが、このような方々に繋いでいただける人的ネットワークや信頼は確実にプラスになっていると思います。

(モ)渡辺:確かに改めて聞くと、情報を重視して株主構成を考えたっていうのが前面に出ている感じがしますね。

下岡:そうですね。端羽さんに「お金って色があるからね」と言われたんですよ。同じお金でも誰から入れてもらったかで全然意味が違うと。我々としては、お金というよりは、ネットワークやナレッジが欲しいと思ったので、そういう資金調達を行いました。

(モ)渡辺:お金の色の話でいうと、COTENなんかは色をめちゃくちゃ意識していますよね。

羽田:COTENは日本の中でも外れ値なので、対比ですごく面白いと思います。一番最初に株主になっていただいたのが、エンジェルラウンドを除いて、ベータ・ベンチャーキャピタルさん、諸藤さんが代表をしているReapraなんですね。 深井 龍之介(株式会社COTEN 代表取締役 CEO)がやりたいことを言うと、「面白い、確かに社会にとって価値があると思う。」って言ってくれたのがこの2社で一番最初の外部株主であり、いずれも福岡地場でした。

下岡:そうなった経緯って、東京でVCから調達しようと思ったけど、断られたからという感じですか?それとも最初からそういう話をしなかったんですか?

羽田:初回は東京に行っていないと思います。当時は参画前だったので詳しくはわからないのですが、ベータさんと、もともと相談に乗ってくださっていた諸藤さんのお繋がりというのが背景にあったようです。でも、前回のラウンド(2023年10月)でいろいろ回ったんですよ。そしたら、VCに軒並み「投資委員会通りません」って言われました。

(モ)渡辺:でも高評価でしたよね。

羽田:はい、ありがたいことに担当者が「いいですね」と言ってくれることは多かったです。ですが、3日後ぐらいに「どうやったら投資委員会通ると思います?」 って連絡がくるんです。「それは僕らにも分かりません。」というやりとりをずっとしていました。 それこそ渡辺さん(モデレーター)も出資してくださっていますけど、COTENのエンジェル投資家の方々は様々な背景の方が多い印象です。COTENの株主の9割は、リモートで会話したぐらいで僕らは直接お会いしていないんです。クアンドとは逆で、投資機会を得るためにネットワークを築いてリアルに会いに行くとかではなく、ご紹介からオンライン会議をして、株主になっていただいたという感じです。

下岡:逆に投資家を選ぶっていう視点はあまりなかったんですか?「入れてくれるんだったらウェルカムです」みたいな感じですかね。

羽田:結果的には入れてくださる方は皆さん株主になっています。選べる状態でもなかったのもありますね。

(モ)渡辺:投資検討のプロセスの中で、がむしゃらに何でもいいから出してもらえる努力をしたというよりは、「私たちはこういう色のお金に入ってきてほしい」という我を通した感じですか。

羽田:ロジックは曲げなかったですね。例えば、「世界史データベースがマネタイズした際の事業計画を見せてくれ」というものには応えなかったですからね。応えられないというのも本音ですが。この辺りは深井のnoteを見ていただくのも良いかもしれません。


◎なぜ福岡?東京で起業しなかった理由

渡辺 麗斗(モデレーター)

(モ)渡辺:2個目のテーマとして「東京発でこの2社は生まれていたのか」について、お話を伺いたいです。クアンドの場合、今は「地方(九州)に拠点を置いて、東京の情報を得る」というやり方をされていますけど、逆に「東京に拠点を置いて、テーマを地方に置く」 こともできたと思うんですよ。その場合、今のクアンドになっているのか、どう思いますか?

下岡:東京で起業していたらこの場には登壇していないでしょうね。そういう意味では、東京にいたら埋もれていたんじゃないかなと思います。東京だから、福岡だから何かが違うかというと、そんなに違わない気がします。でも、母集団が少ないから、福岡にいると目立つというのはありますよね。

羽田:COTENは多分、東京だったら戦い方が変わっていたと思います。株主報告会で説明責任を果たそうとして、数字とかを説明すると株主さんが「そんなスタートアップみたいな報告をしてほしいわけじゃないよ」って言ってくださるんです。「それやる時間あったら別に動画でいいから。なんか面白いことやろうぜ。」って。僕らとしては出資していただいたので、当然事業報告は一つの責務かなと思ってやっていますが。

羽田:ある株主の方から面白いことを言っていただいたんです。 「その数字の報告を続けると、気づいたらその数字の奴隷というか、そのKPIのトラクションが上がっていないことにしか、経営陣もフォーカスいかなくなるよ。 」と言ってくださったんですよ。通常は、「その報告をして、そこにフォーカスしろ」となるじゃないですか。だからそれが引力として働きにくかったというのは、株主の方もそうですけど、COTENという特殊性に合っていたと思いますね。

(モ)渡辺:東京ってお客さんがたくさんいるし、今も実際に関東の会社と商談することが多いわけじゃないですか。でも、福岡にいるからこそ、地方のお客さんとの会話も沢山あると思うんですね。これが関東に身を置いていると、その割合が必然的に低くなるんじゃないかなって考えもあります。東京でスタートアップをやっていると、目の前にこれだけ大きいお客さんがいて、リソースのアロケーションをどこに割くってなったら、関東に重きを置くことになりやすいのかなと思っていて。そのあたりはいかがでしょう?

下岡:僕は福岡にUターンで起業したんですけど、打算的に何かのメリットを求めて福岡に戻ってきたというわけではないんですよね。 東京がいいという価値観に抗いたかった。例えば、僕はApple製品を持っていないんですけど、みんな持っているから自分も・・みたいなのがあんまり好きじゃないんですよ。個人の主観ですが、東京の価値観って「みんなが良いと言っているから、東京は良い」「これが正解だから同じようにやろう」という風潮が強い気がしていて、そういう価値観じゃないやり方をやりたいなと思っていました。だから東京でスタートアップをやるよりは、福岡とか、みんなが目を向けていないけど、実はポテンシャルがあるようなところでやりたいと思ったので、福岡に戻ったという感じです。お客さんの割合とかそういう考えでは動いていなかったです。

(モ)渡辺:当初、地方で起業して大変だった経験ってあったんですか?

下岡:そこはあまりなかったですね。 クアンドは受託開発から始まったので、投資を受けずに1年目で数千万円の受託開発の売り上げが立ちました。それも結局「北九州で起業して大きなことを成し遂げようとしている若者って珍しいよね」って感じでオーナー企業に目をかけてもらった結果かなと。当時起業したのは30歳で「こいつの実績や実力はわからないけど、若者が熱い想いで何かをやろうとしているから賭けてみよう」みたいな人たちがいて、そういう人たちに育ててもらったというのがあります。

羽田:COTENの場合、東京と福岡だと、他人(外部)の声が遠いというのはいいことかもしれません。福岡でコテンラジオを、樋口さん(株式会社BOOK代表取締役)とヤンヤン(株式会社COTENメンバー)の力を借りてやっているんですけど、例えば、東京でやっていたら、毎週イベントに呼ばれたり、毎週多くのリスナーに会い、広告を出してほしいと言われたり、ゲストを呼んでほしいとか、いろいろ提案を受けると思うんですよね。でも、福岡でじわじわ続けられてきた。引力としての遠さは絶妙なバランスだったんじゃないかなと今になって思いますね。

(モ)渡辺:距離が離れてるから、そもそもそういう話が来なくて、断らなくて済むって、実はすごくポジティブな影響なのかもなと思いました。例えば、下岡さんに「関東に集中したら?」みたいな話がきたとき、「うちはこういうのをやりたい会社だから地方でやります」っていうのを言わないといけない。アドバイスをもらったときに、それをずっと言い続けるのは疲労が増すばかりですよね。

(モ)渡辺:なぜそう思うかというと、僕らVCの仕事って9割以上の投資相談はお断りしないといけない仕事なんですよね。案外知られてないんですけど、投資委員会の通過率って5%とか1%を切るので、ほとんどの方にはお断りしなきゃいけないんですが、断るというのは大変なことだと思っています。スタートアップが自分たちの信念にピュアで居続けるためには、断らなくていい状態を作る距離感も重要なのかなと。


◎大事なのは距離感?マイスタイルを貫く福岡

左:羽田 隆也 中央:下岡 純一郎 右:渡辺 麗斗(モデレーター)

(モ)渡辺:福岡にある会社としては異端なことをやっているという自覚があった一方で、異端的な扱いを福岡でされたことありますか?九州の人の言葉で「なんかあいつは東京行ってツヤつけとうよね」みたいな言い回しあるわけじゃないですか。スタートアップの界隈ではあまり聞かないですけど、そういうこと言われたりしますか?

下岡:なんかちょっと茶化されて言われますけど(笑) まあでも本当に嫌がって言う人はいないと信じたいです。

羽田:そうですね。福岡にいる時の方が、注目されていないし、声もかからないですよね。こういうイベントに呼ばれると「コテンラジオ聞いてます」とかお声がけいただくことがあります。

(モ)渡辺:福岡って、なんでもウェルカムみたいな雰囲気が、特にこの起業の界隈に漂っているなと思っています。福岡だとスタートアップも中小企業も同じ場で普通にピッチしていたりして。いろんなコミュニティがあるんですけど、それぞれがお互い違うことを認識したうえで別にいがみ合っていないし、他人にふんわりとしか興味がない。羨むでもないし、嫉妬するでもない。いい距離感があって、互いに情報交換する関係ですよね。これがポジティブに自分たちに働いているなって感じることがあります。

下岡:さっきの話に近いんですけど、僕は、九州で育って九州大学で就活するときに東京に出てきたんですね。そこで質問ある人ってある会社のリクルーターが言ったら、学生はみんな手を挙げるんですけど、全員「質問が3つあります」って言うんですよ。「1つ目は~、2つ目は~、」ってやるんですよね。なんでみんな3つあるんだろうって思って調べると、「最初に質問は3つと言ってから話し始めるといい」みたいなのがあって、 みんなそれをやるんですよ。こうセオリーに流れていきやすい力学が働くんだろうなと思っています。ちなみに僕も途中から質問は3つと言う事にしましたけどね(笑)。一方で福岡ってそうじゃなくて、全然違う考え方、いろんな考え方を尊重しているのかなと思います。

(モ)渡辺:その質問3つありますっていうのが、効率的な場合もあるわけですよね。

羽田:直接的な回答になっているか分からないですけど、福岡はみんなそれぞれ自分のやり方を通している感じがしますよね。僕もラクスルにいたときは、一歩先にシリーズBをした企業の経営陣の方や投資家の方々とかからアドバイスをもらって、同じような戦い方を踏襲していったりするんですけど、それはそれでショートカットできてすごくいいと思います。でも、いい意味で福岡は「こうしたんだ」って言っても「ふーん」みたいな。自分には自分のやり方があるみたいな絶妙な空気を感じますね。

(モ)渡辺:東京ってなぜ、そうなるんですかね?

羽田:いつも同じようなメンバーで情報交換をして、2ヶ月後ぐらいにまたどこどこ会社が資金調達したか話聞こうねって集まって。やっぱり頻度が多ければ多いほど、考えは自然と近くなるという面はあると思います。

(モ)渡辺:その頻度とかサイクルが、関東圏って早いんでしょうね。

羽田:早いし濃い気がしますね。

下岡:さっき話していたように、コミュニティって東京では結構同質な人が集まるけど、福岡は同質じゃなくてもコミュニティが作れるっていうのは、確かにその福岡と東京の違いな気がするんですよね。

羽田:東京だとスタートアップの起業家同士でサウナ行くと思いますが、僕が福岡行ったらサウナ屋のお兄ちゃんとサウナ行きます。スタートアップの知り合いがいないし、全然違うから、結果的にそうなるのだと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、後編に続きます!

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