見出し画像

【前編】愛されるサービスと組織のつくりかた~注目スタートアップ3社代表座談会~

現場仕事に特化したビデオ通話アプリSynQ Remote(シンクリモート)を開発・提供するクアンドは2022年末にプレシリーズAの資金調達を完了、現場に必要な知識や技術がいつでもどこでも供給される世界の実現に向けてプロダクトを発展させるため、エンジニアやデザイナー、セールスを中心とした採用に注力しています。

今回の資金調達では著名なエンジェル投資家の方々がクアンドの仲間に加わってくださいました。その方々の熱い想いを聞かせてもらう対談シリーズ企画、豪華なスピーカーはこちらの方々。

プロダクトのターゲット選定から採用のコツ、投資の裏話まで、盛りだくさんの内容です。前編・後編・こぼれ話の全3回に分けて、本日は「伸びるスタートアップの共通項」についてお送りします。

テキストではなく、動画で座談会全体を視聴したい方はこちら!

九州出身のエンジェル投資家たち

下岡:クアンド下岡です。本日はよろしくお願いします。では冒頭、最初に私たちクアンドのご紹介を少しだけさせてください。私たちクアンドは九州発のスタートアップでして、社名も九州から世界へという意味をこめて、九州を表すQと、ANDでQUANDOという社名になっております。本日は「爆速成長するスタートアップの共通項」というテーマで豪華なゲストをお迎えして座談会を開催させていただくことになりました。では早速ご紹介させてください。

端羽株式会社ビザスクのCEO端羽です。よろしくお願いします。

宮田SmartHRの創業者で、新しくNstock(SmartHR100%子会社)という会社を設立し代表を務めている宮田です。

青柳:青柳です。普段はメルカリという会社で日本の事業の責任者をしています。いまは年間1件ほどの投資を個人でさせていただいておりますので本日は個人投資家としての出演です。

下岡:なぜこの4名かというと共通項がありまして、まず全員、九州出身であること。宮田さん、端羽さんが熊本出身、青柳さん、下岡が福岡出身ということです。加えて、皆さんクアンドのエンジェル投資家ということでして、大変日々お世話になっております。そして、もうひとつは青柳さんが初期のSmartHRとビザスクのエンジェル投資家でもあるということ。

伸びるスタートアップを初期で見つけ、優良なスタートアップに投資することで有名な青柳さんが聞き手となって、爆速成長するスタートアップの共通項を探って頂きたいと思います。

すごく良い投資先を見つけられる青柳さんですが、見極めるポイントってどこにあるんですか?

オフィスを見て投資を決める!?

青柳:アーリーフェーズはオフィスの匂いで投資を判断しているんですよ。SmartHRもビザスクもマンションの一室でした。伸びているスタートアップはオフィスが手狭で、息が苦しい。それでいてこだわりがある。成長中の苦しみと、成長の予感が入り混じっているのがオフィスを見ればわかるんです。

青柳さんが匂いを感じ取ってくれた(?)クアンドのオフィス

あとは初期プロダクトがユーザー課題を捉えていること。それに加えて、経営者ひとたらし説があります。ビジョナルの南さんがその典型だけど、強力な経営者に加えて、誰を巻き込めるかが会社が背伸びできる限界を決めるかなと思ってます。端羽さんも、宮田さんも強い経営チームを作れているが、それは二人の経営者としての人たらし力があるから。それをクアンド下岡さんにも感じているので、強いチームを作れるのではないかと思ってます。

端羽さんは何か成長するスタートアップの共通項ありますか?

端羽:うーん、色々あるんだけど、経営者はネアカ(根が明るい性格)じゃなきゃいけないと思ってる!

一同:笑

端羽:暗い人についていくのって辛いじゃないですか。外から見てるとビザスクは伸び続けているように見えるかもしれないですけど、当然どこかで停滞している時期はあるわけです。伸び悩んでいるときに「過去にもそういう時期があったし、大丈夫だ」と言える気持ちと仮説がしっかりとあり、明るくあることが大切。

伸び悩んでいるという事実も、まじめに自分たちの事業を細かく分析しているから気づいているわけで、気づいていること自体が素晴らしいことだから「わたし偉い」と自分で思うようにしてます。逆に悪いニュースがあったときは、それは伸びるきっかけであり、それに気付けてよかった、さあ頑張ろうと思えるし、伸びているときは伸びているときで、「よっしゃ調子いいぞ、さあ伸びよう」と思える。

いつも明るい感じでいられるかっていうのは経営者として凄く大事なことだと思ってます。当然、ストレスが溜まるときはあるけど、ストレスを溜めて凹む意味がないっていうか、それは私の仕事じゃないと思って、ネアカでいようと思ってます。

青柳:それは本当にその通りで、アーリーフェーズだけではなく、上場するとさらにステークホルダーが増えて、パブリックになるのでSNSや掲示板とか見ると目に毒ですよね(笑)。宮田さんは伸びるスタートアップの共通項ありますか?

宮田:さっきオフィスの話が出ましたが、青柳さんになんで出資してくれたんですかって聞いたら「オフィスの空気が良かったからです」と言われたんですよね。そのときはオフィス?!と思ったんですが、その後2~3年後にアタマプラスさんに遊びに行ったときにめちゃ雰囲気が良かったんですよ。青柳さんが言っていたオフィスってこのことか!と思いましたし、その後、青柳さんがアタマプラスさんに出資されているのを見て判断基準がぶれないなと思いました。

経営者のアイドル力

宮田:伸びるスタートアップの共通項ですが、経営者ひとたらし説に近いですけど、アイドル力、この人を応援したくなる、応援しないといけないなと思わせる力は大切だと思ってます。

社内のアイドル好きの人達に聞いたんですが、人気のアイドルになるためには歌唱力やダンス力とかではなく、自己開示する能力や応援したくなるエピソードを持っているなどが重要で、外見が可愛くてダンスも歌唱力もうまいアイドルよりも、自己開示をよくしていて、助けなきゃ、応援しなきゃと思わせるアイドルの方が人気が高いと社内のアイドル好き複数人が言っていて、なるほどと思いました。その人たちが「宮田さんはアイドル力があると思いますよ」と言ってくれたので、その頃から自分ができないことはめっちゃできないと言うようにしたんです。応援される人は社員やユーザーだけではなく、スタートアップ界隈、それ以外の人たちでも、応援されるとそれが事業の推進力にも繋がるのでアイドル力、ひとたらし力はとても大事だと思います。

あとはチャンスをチャンスと認識して、動ける人。数年前まではSaaSバブルだった。その時に大きく調達して、大きく事業に投資できている企業は伸びているし、そうでない企業との差が大きくなっている気がする。調達まではできるんですが、それを使えているかが大きな差になっていると思います。誰かが教えてくれるわけではなく、これチャンスなのでは?と自分で気づけて動けるかが重要。よくチャンスをバッターボックスにたとえられるが、殆どの人はバッターボックスに立っていることに気づかない。知らず知らずのうちにバッターボックスに立っていて、そもそもいま立っていることに気づいてないから当然バットも振れないみたいなことが多い気がしてます。

バッターボックスへの立ち方

端羽:え、でもそれは伸びてるSmartHRだから知らないうちにバッターボックスに立ってるみたいな素敵なことが言えるような気がしていて、私たちなんかバッターボックスに立つチャンスがなかったら、呼ばれてもないのに「私の番ですか~?」って言いながら無理やり行くみたいな、そういうのもある気がします。

宮田:たしかにバッターボックス奪いに行くぐらいじゃないといけないこともありますよね。(笑)

青柳:これはどちらのパターンもありますよねー。乱世で勝ち抜くようなタイプもいれば、端羽さんのように競争がないところにいって自分たちのペースでしっかりやるというタイプもある。SmartHRは競合が多い市場で、競合の動きを見て誰よりも早く先に行って相手の戦意を喪失させる感じだし、ビザスクは誰もいないマーケットをしっかり自分達のペースで進んで高い利益率を保つ戦い方。大切なのは、自分たちのいるマーケットや、自分たちの戦い方を知り、自分たちにあっている事業を選ぶことも伸びるスタートアップの共通項かもしれない。

下岡:端羽さんのバッターボックスの立ち方を聞いて思い出したのが、端羽さんからこういうアドバイスもらったことがあるんです。そのころはVCの方々と戦略やターゲットみたいな話をずっと議論しているのに前に進まないというような時期でした。そんな時端羽さんが、「難しい話は分かんないけど、もうとりあえず、DM送ったりとかそういうのをやればいいんじゃない?」とポンと言ってくれました。

端羽:ただDM送れといったわけではなく、もうちょっとだけかっこいいアドバイスをしたはず(笑)! ターゲットはどこかとか難しい分析とかそういう話があったけど、何でもいいからもっとスモールに何回バッターボックスに立てるか、もらってる限られたお金の中で、何かしら検証が進んでないと次のラウンドにいけないから、とにかく100件でもいいからあたってみたら、何件返事がきたかという検証だけでもできたらいいじゃん、それをたくさんのターゲットにやってみればいいだけだから、ターゲットを研ぎ澄ますことを机上の分析だけでやらない方がいいよと、あったてみて、その返答率でみればいいじゃん、ということを言ったからもうちょっとだけ賢いアドバイスをしました(笑)

下岡:というアドバイスをいただきました(笑)

端羽:でも本当に何回バッターボックスに立てるかだと思っていて、特にアーリーなとき。何かしら検証しないと次のラウンドに進めないから。っていうのを本当にそう思っているので。なんならちょっと泥臭く見えるかもしれないけど、何回でもできるだけ多くのバッターボックスに入ってみて、結果をみてみようみたいな。頭いいんですよ、みんなの議論。だんだん混乱してきて。そんなのやってみないと分からないんじゃないかなと。

青柳戦略よりもエグゼキューションだよみたいな局面ってあって、むしろたくさんあって、それが差を分けているということがある。

端羽:なんか迷ってる暇があれば1つやってみればもうちょっと昨日より賢くなってるからって。

下岡:VC含めはっとさせられましたし、起業家として実業としてやっている人のアドバイスだからこそ刺さるものがありました。そういう実業から来る重みのあるアドバイスこそがエンジェル投資家の方々に入ってもらっている一番のうまみ(価値)だし、めちゃくちゃ助かってます。

オンラインで対談中の様子

サービスの価値から考える、ターゲットを絞るか絞らないか

下岡:さあ、ここからはユーザーが熱狂するプロダクトのポイントについてこ具体的に聞いていきたいと思います。

端羽:ビザスクも最初全然伸びなかったんですよね。ただ、その時も凄くビザスクのことを好きでいてくれたユーザーさん(アドバイザー/クライアントの両方)がいらしゃった。これだけ好きな人たちがいるってことはプロダクトは素晴らしいものに違いなくて、それを広められていない自分たちに問題があると思ってました。

自分たちの提供価値に疑問は感じずに進めたことが良かったし、初期のユーザーさんが褒めてくださったことは小さなことでも全員に伝え、厳しい意見をもらったら意見のある人たちは愛のある人に違いないって思ってました。私たちネアカだから(笑)。

下岡:初期ユーザーと一緒にプロダクトを作っていく場合、業界がバラバラだと求められるものが違いますよね。その場合にどのように意思決定していきましたか?

端羽:ビザスクも事業会社、コンサル、金融のお客さんは求めるものが違うので、どこから行くのかというのは非常に重要だった。何回もやれるマーケティングは最初の小さなwinをもらえる人がいいし、逆にプロダクトは時間がかかるので一番意見の多い人に合わせる。時間軸、ターゲットの大きさ、winを勝ち取るまでの時間など考えました。

青柳:SaaSの会社でも一旦できた事業をどう拡大するのかって話は流通しているのだけども、どういう順番で伸ばしていくのか、プロダクト開発をどうするのか、プライシングをどうするのかというのは、意外と話が出てきてないんですよね。宮田さんここら辺ありますか?

宮田:あります。良いアドバイスができると思います(笑)。

SmartHRも初期はターゲット絞ってなかったんですけど、2018年に飲食・小売りのチェーンに絞ることで過去一番伸びたんですよ。その理由は3つあります。1つ目はニーズが深かったから。全国に店舗があって、アルバイトなど非正規雇用が多い。バックオフィスは本社にあって、各店舗での雇用契約や入社手続きの対応は店長がやっていて、会社としては店長に事務作業なんかやっているヒマがあったらもっと重要な店舗運営に集中して欲しいのでニーズがピッタリだった。2つ目は、仮に飲食と小売りのチェーンだけしか対応できないサービスになったとしても、十分市場が大きいよねとなったからなんです。そこで終わってもビジネスとして成り立つ。

3つ目は他の業種を攻めるときに事例とロゴが強いから。他の候補として建設業や病院があったが、仮に有名な病院さんに入っていたとしても他業種の人からすると「あ!あの病院もこの病院もつかってるんだ」とはならないですよね。けれど、飲食店や小売店はみなさんいち消費者として知っているので、ロゴや導入事例は効果は強かった。業種を絞って成功した事例ですね。

端羽:でもペインが深いところのターゲットがあまりに小さかったら本当にそこに特化していいのかという疑問もあるので、市場規模って大事ですよね。

下岡:我々も現場のリモートツールとして建築・建設・インフラ交通・製造と幅広いお客さんがいるので参考になりました。

端羽:一方で、投資家から頂いたアドバイスで守らなくてよかったなと思うことがあって、ビザスクのアドバイザー側を特化させて「ヘルスケアに強いビザスクです」のようにお客様を絞った方がマーケティング的にもお客様を捕まえやすいよと言われたんですけど、それは絶対違うと思ったんですよね。1業界のことだけを知りたい人はビザスクなんて使わなくてもすでに詳しいはずで、ビザスクは広く色々な業界を知りたい人に必要になるサービスであるはずだから、大変だけど全業界をカバーしてますってのがこのサービスの価値だからとアドバイザーを絞らなかった。なので全てアドバイスが合っているわけではなく、自分たちのサービスの本当の価値は何だろうってところはぶれない方がいいと思います。

下岡:そういう意思決定は端羽さんの中で出てくるものですか、チームで話し合って出てくるものですか?

端羽:このサービスは、私の前職の経験も影響しているので基本的には私が意思決定してました。勿論、その過程でなぜそう思うのかなどを丁寧にチームに説明してだけど。

青柳:ホリゾンタルに行くって意思決定していて、インターン生含めてお客様と接する部署が頑張ってアドバイザーをさがすってことやっていて、これ凄く泥臭いことやってるなーと思ってました。

端羽:WEBサービスに転職したはずなのに!って感じだった(笑)。

青柳:でもそれが競争優位を生んでいた、端羽さんがこれが勝ち筋だからって言っていたのを覚えてます。

下岡:宮田さんは先ほどの飲食・小売りに絞った3つの条件はどのように出しましたか?

宮田:その話には実は前段階みたいなのがあって、「2018年一番経営上で重要なことはなんですか?」って質問をSmartHRのアドバイザーだった福山太郎さんに言われたんですね。で、パッと答えられなかったんです。売上や導入企業数の目標が云々という話をしてはみたんですが、それは成し遂げたい結果であって、一番大事なことではないですと言われてしまって。それ難しいなと思って。そして入社直後だったCOOの倉橋さんと話し合って、「2018年の経営上一番重要なことは、飲食・小売りチェーンの業界でマーケットリーダーになることです!」と言い切れるようになって、そこに必要なものは何でもやるようになったんです。

僕がざっくりこんな方向性がいいと思うというのを話して、それを倉橋さんがしっかり市場規模のデータなどを調べてくれて、最悪ここだけになっても大丈夫というファクトを出してくれたので、全社に説明するときはちゃんと裏付けのデータとかがあってみんながなるほどと納得してもらえたと思います。二人で作っていったって感じですかね。


後編はキーマンの採用について。金言がたくさんです!

下岡が代表をつとめる株式会社クアンドの事業や働き方に興味のある方はこちらへ!