見出し画像

【イベントレポート】FGN主催「Stand By」クアンド×COTEN×β Venture Capital<後編>

こんにちは!クアンドnoteチーム2号です。
2024年3月28日にFGN主催の「Stand By」がCIC Tokyo(虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階)で開催されました。

このイベントは「今、福岡とSTART UPする理由がここにある」をテーマに掲げ、これからのスタートアップシーンを展望するプログラムを実施したハイブリッド型で、現地には300名以上の方がご参加いただき、ビッグイベントとなりました。(オンライン含めると400名超)

事業会社や投資家、起業家、スタートアップ支援者など多様なスピーカーが登壇しており、クアンド代表の下岡も、株式会社COTEN羽田さん、モデレーターにベータ・ベンチャーキャピタル株式会社の渡辺さんとともにトークセッションを行いました。

この記事はそのイベントレポート<後編>です!
▼前編はこちら


◎なぜ?羽田氏がCOTENに参画した理由

下岡:興味本位で聞きたいんですけど、羽田さんって投資銀行出身ですよね。投資銀行⇒ラクスル⇒COTENって、極端な変化じゃないですか。
なんでCOTENに入ったんですか?

羽田:ちょうど資本主義にお腹いっぱいになったんです(笑)
COTENが採用をしていたわけじゃないんですよ。コテンラジオを聞いていて、この人と話したいなと思っていたのですが、何かのきっかけで共通の知人を介して話すことになって、関わり始めました。関わった当初は、お互いずっと探り探りの中でやっていたんですよね。

羽田:証券会社にいるときに、IPOをやっていたんですけど、上場を目指している会社さんの向こう側には、その会社の株主がいるんですね。当然、日本を支えるVCの皆さんもいますけど、皆様が同じような会社に出資していく。いろんなスタートアップに多様な投資をして挑戦をというよりも、一緒にいけそうなやつを見つけて、一緒に育てるといった感じです。とてもいいことだと思うんですよ。1社だったら1億しか投資できないものを、3社で3億投資をできる。すごく合理的なんですけど、他にもやり方はあるだろうなと。

羽田:そのようなことをぼんやりと思うようになっていた時に、「COTENは広告費ではない方法でお金を集めたい」という話をラジオで聞いていて、何か違う方法でやりたいんだなっていうのをいいと思ったんですよね。その時に参画したいという思いが芽生えました。そこで繋がったかもしれないです。


◎資本主義?コミットはすべきか

左:下岡 純一郎 右:渡辺 麗斗(モデレーター)

下岡:僕の実家は北九州で建設業をやっているんですよ。もちろん外部資金はゼロ、借り入れもゼロで、ずっと成長をしながら地元に雇用を作っています。でも僕たちスタートアップって、期待値の前借で調達して、その資本をレバレッジして事業を大きくしていくから、資本主義を利用して事業を大きくしていくこと自体がダメだっていうのは違うなと思っているんです。そこを否定するのは責任放棄なんじゃないかと思っています。ただ反面、その「数字」だけを追っているのは違う気がして、自分の中でも答えの出ないところはすごくあります。福岡ってよく、そういう資本主義じゃない世界で動いてるよねっていうイメージがもしかしたら外からあるかもしれないけど、それはそれでスタートアップとしていいのかみたいな。

羽田:そこはCOTENも明確に言っていて、ポスト資本主義とかそういうことで僕らもよく登壇などに呼ばれるんですけど、今の資本主義を否定しているのではなくて、価値の等価交換も正しく必要だと思うんです。だからそこは下岡さんがおっしゃるとおり、大きい資本があったら戦い方とか、挑戦ができるとか、雇用が生まれるとか、構造として適切に機能していて、とても良いと思っています。単純にそのうちの100%が資本主義で回らなくてもいいんじゃないかって感じです。

羽田:「2%ぐらいは2000年後に笑顔になるかもしれない投資でもいいんじゃないですか?」って言っています。皆さんからしたら、「お前2000年後っていうのに今のPLで投資してねって言ってるじゃん。そこがずれているよ」ってなるんですけど、その矛盾の中でもその投資が未来を作ると思っています。僕らもその出資を受けられないと世界史のデータベース作れません。

下岡:ある意味「投資をして欲しい。その資本を大きくして返すことはコミットしないけどね」っていうことですよね。それでよく投資しましたよね(渡辺さんを見ながら)

羽田:質問が殺到しました。「他の株主はなぜ投資してるんですか、既存の株主に会わせてください」って。検討している投資家さんに逆に聞かれるんですよ。「僕らは存じ上げません。直接聞いてください」と話して、紹介をしています。

下岡:それはどうしてですか?

(モ)渡辺:言語化が難しいんですけど、そもそも、起業家にリターンを返すことにコミットしてもらうのはおかしいじゃないかと思っています。僕たちは投資先の会社が大きくなった時にリターンが返ってくるかもって期待をして投資をするんですが、起業家はそれをコミットするために事業や資金調達をしているわけではないじゃないですか。資金調達の過程で、リターンを生み出すことにコミットするって宣言するのが効率的だし合理的なのは分かった上でなんですけど。

羽田:でも今、渡辺さんの後ろにLP(Limited Partner)さんの顔が見えるわけですよ。 その方々はコミットしてよって言っているんですよね?

(モ)渡辺:その面はありますが、でもコミットすべきなのは我々なんですよね。たとえば、地方だとそもそも初めての資金調達を始めた時点ではEXITどうするかなんて、1ミリも考えてないみたいな人もいるんですよ。東京だったら多分論外になることが多いと思うんですけど、僕らは投資でご一緒することもあって。まず投資をした上で、金融ってこういう仕組みで、僕らが何を背負っていて、投資先には何を求めているのか。それには期限があって、その時にどうなってると僕らはハッピーだし、こうなってると良くない?みたいなのをお互いにすり合わせていくイメージです。

(モ)渡辺:マイナスを目指してやっている人なんて誰もいないので、どこかのデカさにはいきたいと思ってる。「ここが自分にはいいかも」って定まったときに僕たちの投資に対してのリターンの自覚が生まれてくればいいなと思っています。そこをちゃんとコミュニケートして、最終的にはそれが実現するようにそこに対して僕らはコミットするんです。投資する時点でコミットさせるのって、別に僕らの仕事じゃないと思っているんですよね。特にシード投資家でそういう考えなので、COTENに「コミットしない」って言われても、別にいいか、と思っていました。

羽田:クアンドはこのステージまでにコミットはしてるんですか?

下岡:うちもコミットしていないですね。コミットはしていないんですけど、社会的なインパクトを最大化することを目的に調達をして、その規模を大きくするためには、時価総額というものを上げていかなきゃいけないと思っています。例えば、リスクを負わず時価総額50億のExitを10年かけてやるんじゃなくて、外れてもいいから、1千億目指そう。そういう事業がどうできるかってことを常に念頭に置いています。なぜなら、そうしないんだったらスタートアップの意味がないと思っているので。


◎何が正しい?合理の基準

(モ)渡辺:さっき下岡さんが問題提起してくれたように 、東京的な合理で動くやり方も使わないとたどり着けないところってきっとあるだろうなって思う面もあります。「金融」って合理化の権化みたいなところもあるので。
例えば、20億集めますってなるとCOTENの今までのやり方で集まるかというと、正直まだちょっと遠い未来かなって思う部分もあるんです。20億いるかいらないかは横に置いたとして、もし仮にそうなった時に、全部じゃないにしろ、一部合理的なアプローチを優先することもあるでしょうか?合理ばかりやることに対して二人とも疑問を持っているという前提もあると思うので、それならどうバランスをとっていくのがいいのか、考えがあればそれも聞きたいです。

羽田:これはとてもいい質問です。お金の事例はそうですけど、日々の意思決定からCOTENはすごく考えています。「合理的に考えたらそっちやった方がいいじゃん」とか「合理的にお金稼ぐなら、龍之介が講演活動をしまくった方がいいのでは」って。COTENCREWが増えて、講演での売上入ってきて、ラジオにも広告つけちゃいましょう、みたいな。でも僕らはそれを、”しない”んですよね。
日々の就業規則とか、育休産休の仕組みをどうするのかみたいなところにまで考え方というのは影響します。
COTENでは社員も全員議論に入りますね。COTENらしさみたいなものって、言語化はまだできてないんですけど、なんとなくみんな働いて長いので、何かを決めた時、僕ららしい判断だねっていう会話が生まれます。

(モ)渡辺:確かにCOTENって、会社の行動指針みたいなのは聞いたことないかもしれないですね。

羽田:絶賛1年くらいかかって作ろうとしています。

(モ)渡辺:クアンドはどうですか?

下岡:この直前に、僕たまたま知り合いに呼ばれて、霞ヶ関の上の方のビルにある上場会社と社長が集まるパーティーに行ったんですけど 、1500億くらいの時価総額があって、カウンターにはすごいシャンパンが置かれていました。会社で子供が生まれたら100万円、戻ってきたら100万円、子供一人につき月5万円。採用でリファラル入れたら、300万円支給してますみたいなのがあったんですよ。多くの若い社員が生き生きと働いてる感じがあったんですよね。これ資本主義の権化みたいなものなんですけど、これが悪いかって言うと幸せそうな人もいるからいいじゃないですか。でも、例えば地域に帰って、そういう世界に無関心な人々と、さっきのCOTENみたいな話をすることもよいですよね。どっちもありだし、どっちもいいよなって思いを持ちながら経営しているので、どっちが良いって今決められるわけじゃないっていうのが正直なところですね。

(モ)渡辺:なんかでっかいことをやろうとした時に、合理をうまく使わなきゃっていう意識はありますか?

下岡:スタートアップと地方中小企業のプレーを両方やってみてる感じがすごくあります。スタートアップは資本主義の仕組みで集めたお金で、世の中に対するインパクトを最大化する。そのための法人なので、それを全うしようと思っています。一方、実家の家業は別に誰かのお金を預かってないし、だから、急成長を目指すわけでもなく、働いてる人や地域への貢献とか、そういうものをゆっくりと大きくしていくためにはどうあるべきかっていう考え方になります。

(モ)渡辺:ちょっと話が変わるんですが、地方中小企業が合理を一番使ってるのって、例えば節税とかわかりやすいなと思っていて。合理的に考えると節税するよねみたいな。結構、倫理感や経営者の嗜好が出るなと思っています。それが合理的だからといっても、節税のためだけの節税をしていない会社も結構あるじゃないですか。アトツギって最近呼ばれてる会社とかだと、親の代では節税節税でいろいろやっていたけど、全然そんなことやっていないという人に僕最近会ったんですよね。都会だから合理かどうかっていうのは、またちょっと違うのかもって、お二人の話を聞きながら考えていました。

羽田:バランスとか、両方聞ける状態にしておくというのはあるかも知れませんね。節税もきっと節税の目的があるでしょうし、できるだけ内部留保にするなり、もしくは従業員に分配するというのもあるでしょう。大切なのはきっと目的であって、その手段の合理性にフォーカスしすぎなくてもいい気がします。グラデーションでしかないじゃないですか。従業員も巻き込んで、地域も社会も巻き込んで経営をしているからこそ、信念と合理性のバランスをとって「今はこっちを取りましょうよ」と相互監視で言える人が必要だし、それが会社にとって必要なガバナンスだなと思います。


◎多様性にこそ可能性?

左:羽田 隆也 中央:下岡 純一郎 右:渡辺 麗斗(モデレーター)

下岡:少し話は変わるんですけど、最近思うのはスタートアップって、もともとFacebookとかデジタル完結のマーケットがすごく大きくなって、一気に広がっていったじゃないですか。今ってSaaSとかもそうですけど、デジタルだけでやっていたら、思った以上にそこのマーケットって大きくならなかったから、リアルなアセットを持っている企業にアクセスをしだして、そこを買ったりとか、そこと組んだりするじゃないですか。
スタートアップがリアルビジネスっぽくなっていて、逆に地域の後継ぎとかって、外で学んできた人たちが帰ってきて、自分たちでSaaS作ったりというのをやり始めているんですよ。リアルを持った人たちが、ITを取り入れながら新しい風を入れているのを話に聞くと、どっちの人なんだろうという感じになっています。スタートアップと後継ぎみたいな感じじゃなくて、それがいい感じに混ざってきているなって思っていますね。登り方は違うんだけど、その人たちが考える資本、事業、地域とか、その辺が思想として似てきているのは、すごく面白いです。それが交わるのが福岡の良さかなとも思っています。

(モ)渡辺:今回の「可能性」と「多様性」ってテーマについてですが、僕はそもそも「多様性にこそ可能性がある」と思っているんですね。なので、スタートアップだけに限らず世界は「多様なままであるべきだ」っていう前提があるんです。それを考えたときに、いかに近い範囲での同質化やその中での合理に流されずに、自分の信念を持ちながらやるのかが大事ですよね。とはいえ、社会にインパクトを与えるためには、金融をうまく使って、合理に寄せた説明もできるようになっていなきゃいけない
これが、今後、福岡でスタートアップする人に求められていることだと思っています。自分のやりたい気持ちとかからスタートして感情を大事にする一方で、スタンダードというか合理も使う。メインストリームのやり方は、ある意味で同質化しやすいってさっき言われたと思いますが、合理的に動くということが正しい部分も大きいので上手く使いこなすということなのかなと。ここの合理と感情の折り合いのつけ方みたいなところを最後にお話しいただきたいです。

羽田:自分がどれくらいの距離のときが、一番心地いいかですかね。合理と非合理とか、感情と理性とか。例えば、資本主義と共創、共感とか、資本じゃなくてみんなで分けるとか、自給自足とお金で解決するとか。自分にとってのバランスや、居心地の距離、遠さみたいなところは住む場所も含めて、人それぞれできっとあると思うんですよ。それは少しずつ変わっていくと思うんですよね。子供ができたら、もうちょっと田舎にとかって、なんとなく思われる方はきっと職場と精神距離を少し遠くしたいと思うんですよ。僕は今家族で引っ越しを検討しているんですけど、そういう自分がニュートラルになれるいろんなものとの距離が腹落ちしてくるといいんだろうなと思いました。

(モ)渡辺:日々の中でいろいろなものとの距離感を意識すると。COTENがまさに日々の活動の中で「合理的に考えると」ということについても確認しあってるわけですもんね。距離感もそうやって日々の生活の中に落とし込めるかもしれないですね。
下岡さんはいかがですか?

下岡:いろんな人とのつながりや付き合いを持つというのが、僕の中では答えですね。東京に来てスタートアップをやっている人たちと、資本政策や成長戦略の話もするし、福岡に帰ったらアトツギの人と事業承継どうしていくかとか、従業員をどうしていくかみたいな話をするんですけど、いろんな繋がりがあるので、これが正しいっていうよりは、自分を結構、客観的に捉えられていると思います。まさにメタ認知ができるっていう感じですよね。 そういうのをつながりの中で見れるポジションを築いておくというのが、僕なりの距離の取り方っていう感じかなと思います。

(モ)渡辺:ありがとうございます。最後にまとめっぽいことを僕から言うとですね。合理的なやり方でいいところまで行くというのは正しい方法であると思っています。一方で、よくわからないものは合理性の追求からは生まれないと思うんですよね。これをめちゃくちゃ超えるかもみたいな、よくわからないものって、結局合理的じゃない、共通化、均一化されてないところから生まれるような気がしています。合理から離れることを大事にするっていうのももちろんそうなんですけど、そこだけで突っ張ると壺職人になっちゃうっていう先ほど羽田さんの話もあったので、いかにいい塩梅を探すかっていうのが大事。そして福岡はそれを探せる環境があるのではないかと僕たちは思っています。ということで、福岡でお待ちしております!


最後までお読みいただきありがとうございました!
福岡のスタートアップは、個性豊かで多様性のある会社が多く、今回のトークセッションは非常に興味深いものがありました。
福岡は今後も熱い想いをもった人たちが集まって、益々盛り上がっていくことでしょう。そこを先導できるスタートアップとなれるよう、クアンドも日々メンバーとの対話を大事にしながら、多様性を認めて、成長していきたいと思います!

福岡のスタートアップをもっと知りたいという方は、ぜひ下記リンクのカジュアルトークをご覧ください!