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【前編】公開相談会!西口一希氏にPMF達成を相談してみた~戦略や計画よりも大切なもの~

クアンドほろ酔い対談 西口一希氏 × クアンド下岡純一郎

現場仕事に特化したビデオ通話アプリSynQ Remote(シンクリモート)を開発・提供するクアンドは2022年末にプレシリーズAの資金調達を完了、現場に必要な知識や技術がいつでもどこでも供給される世界の実現に向けてプロダクトを発展させるため、エンジニアやデザイナー、セールスを中心とした採用に注力しています。
今回の調達では著名なエンジェル投資家の方々がクアンドの仲間に加わってくださいました。その方々の熱い想いを聞かせてもらう対談シリーズ企画、初回はマーケティング業界の巨匠、西口一希さんとのほろ酔い対談です。

P&Gからロート製薬へ

今日は宜しくお願い致します!僕もP&G出身ですが西口さんはP&Gに何年ぐらい在籍してたんですか?

1990年入社で在籍は16年。ちょうどJHQ(日本の本社)が建てられる前ぐらい。あの時はP&Gもまだ小さくてベンチャーだったなあ。マーケティングって部署はなくて、宣伝本部だったんだけど、なんでもやらされてたんだよね。

商談、営業支援、開発、調査設計、ファイナンスもエクセルでゴリゴリやるし、なんでもやってた。宣伝本部でブランド担当している人がすべてやるべきでしょって感じだった。

年末に開催されたP&G同窓会で会った若いP&GのOBOGは凄いなと思って。辞めてすぐ通販の会社とか立ちあげていて、我々の頃はそんな専門性がなかったし。いまのP&Gマーケはエグゼキューション(実行力)が強いよね。でもゼロイチの近い状態で事業を作るとか、ブランドマネジメントという観点では昔の方が携われるチャンスが多かったかもしれない。

そこからロート製薬に行かれるわけですが、またなんでロート製薬だったんですか?

ロート製薬はヘッドハンティングだった。P&Gも辞めるつもりはなかったんだけど、会社の方針としてDirector(上級部長)でずっとは居座れないので。

日本から出て海外でチャレンジして大きな成功を収めないと次のステップには進めなかったのだけど、子どもが関西で学校に行っていたし、元々、神戸に住みたくてP&Gに入ったし、ずっと神戸から離れたくなかったので引っ越しの必要がない次のキャリアを選んだ。パフォーマンスが落ちて辞めろって言われるまでP&Gにいることもできたかもしれないけど、言われる前に自分から出て行った方が格好がつくかなと(笑)。

ビジネスの0⇒1を自分で回す

意外です。。西口さんは成功の連続だと思ってました。。

明らかに失敗の方が多いよ。成功しているときに一気に投資して目立つから成功のイメージがつくけど、逆に失敗したものは華々しくならないので世間に知られないまま消えていくんだよね。

沢山失敗もしたけど、振り返ってみるとロート製薬の仕事がビジネスとしては1番面白かった。P&Gみたいにがちがちにロジックやフレームワークでやらない。具体的な顔の見えるお客様とプロダクトアイデアからスタートする

実は『顧客起点のマーケティング』という理論はP&Gの影響は強いけど、殆どはロートでやっていたことを分かりやすい形でまとめたもの。会社の雰囲気から仕事の進め方まで全然違うんだけど、ゼロイチで事業を作る基礎はロート製薬で色々とやらせてもらった。製品開発、パッケージ開発、物流、工場に至るまでものづくりまで含めてマーケティングをできたから今の力が身に付いた気がする。スイーツのお店とかまでやって、失敗しちゃうんだけど、結局ビジネスの0⇒1を自分で回さないとビジネスを作る力は身に付かない

懐かしい神戸の居酒屋にて

「単価」より「頻度」

ではここからは私たちの事業の相談を。私たちのSynQ Remoteとは現場のリモート支援を実現するビデオ通話なのですが、現場の種類も沢山あって、お客様もバラバラで、どのセグメントに注力していったらいいか困ってます。

いきなりガチな話になりましたね(笑)。そうですね、まずは利用の「頻度」が高いユーザーに注目すべき。通話時間、通話回数、関わる人数のデータを全ユーザーで見る。それぞれの上位10ユーザーに拡大の可能性は全部入っているはず。いまのフェーズだと絶対に経営者が全部見た方がいい。

そして、なぜ頻度が重要かというと長期的なLTVに一番効くから。売上=人数x単価x頻度という計算式が成り立つが、今まで見てきたビジネスでLTVが上がっているビジネスは100%の確率で「頻度」が先に上がる。その遅行指標として単価が上がっていく。

単価は短期間に営業努力と新商品やサービスの追加で上げられちゃうから、みんな安易に単価を上げにいっちゃうけど、単価だけ上がって頻度が上がらないとユーザーが離脱してしまい、結果としてLTVは伸びにくい。そうすると事業が伸びない。

確かに「頻度」よりも「単価」を上げる方が優先度が高いと思ってました。

実際、支援先のいくつかで直近1年のLTVと3年のLTVを並べてみた。そうするとほとんどの会社は直近1年のLTVを上げるための施策やユーザーを優先していた。本来、3年間のLTVを見ていかないといけないのに、目先の売上を追ってしまっている。これを続けると投資対効果が落ちて、いわゆる頭打ちという状況になり、売り上げが伸びなくなってくる。

これを見て、「売り上げをさらに伸ばすために新規事業を作って、顧客あたりの単価を上げなきゃ!」と新しい製品やサービスの開発に走りがち。でもこれも同じようにすぐ売上が頭打ちになってしまう。

そもそも見ているところを間違っている。短期的な売り上げや単価ではなく、3~5年のLTVが長い人がなぜそうなっているのか、どう使っているかをもっと見るべき

特にBtoBはLTVが大切なので、利用の頻度が上がって「習慣」になることが重要。SynQ Remoteが彼らにとって毎朝の歯磨きのように習慣化してもらうにはどういう用途だろうという視点で考えないといけない。

なるほど。新規の機能開発によって1アカウント当たりの単価を上げようとしがちですけど、上げるべきはまず頻度なんですね。その結果、単価も後から上がってくると。

そういうこと。そして、ちょっと違う観点なんだけど、SynQ Remoteは建設や製造の現場と遠隔を繋ぐビデオ通話ツールとして開発したと思うんだけど、たぶん全然想定していなかった使い方って発生してない?正直クアンドのめちゃでかいビジネスはいまターゲットとして見ていないところから発生する気がしている。

外れ値がビジネスの種!?

え?なんでわかるんですか?確かに中古車の鑑定に使いたいとか、24時間ジムの管理に使いたいとか、想定していなかった使い方や問い合わせはありますね。

よくあるのは自分たちの新しいサービスを始めたときに、こういうターゲットに対して、こういう便益でサービスを提供すると決めてスタートするんだけど、そこと全く合わない人が来たときに外れ値とか例外として捉えてしまう。でも実はそれがビジネスの種を見逃していることになる。

どういうことかもう少し詳しく教えてください!!


…ここからは後編に続く。後編は西口さんが語る「PMFにとって戦略よりも大切なもの」について!

後編はこちら

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