【こぼれ話編】愛されるサービスと組織のつくりかた~注目スタートアップ3社代表座談会~
現場仕事に特化したビデオ通話アプリSynQ Remote(シンクリモート)を開発・提供するクアンドは2022年末にプレシリーズAの資金調達を完了、現場に必要な知識や技術がいつでもどこでも供給される世界の実現に向けてプロダクトを発展させるため、エンジニアやデザイナー、セールスを中心とした採用に注力しています。
今回の調達では著名なエンジェル投資家の方々がクアンドの仲間に加わってくださいました。その内3名との座談会企画は前編・後編とお送りしてきましたが、本日はこぼれ話編、「エンジェル投資家の役割」についてお届けします!
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1年に1社のエンジェル投資
下岡:それぞれ創業してどのくらいのタイミングで青柳さんからの投資を受けたのですか?
端羽:ビザスクとしては創業して4年くらい経っていたんだけど、初期の1年くらいはふわふわしていたので、実質的には創業初期に投資をしてもらったと思ってます。サービスが正式リリースされるまでの最初の1年は私たちの中であまりカウントされていないんですよ(笑)
宮田:SmartHRも似たような感じでカウントされていない最初の2年があります(笑)青柳さんからは、サービスを出してから1年半後くらいの比較的初期のタイミングでエンジェル投資をしてもらいました。
下岡:2社ともすごく初期ですね。
青柳:そうですね、2社ともすごくいいタイミングでご縁をもらったと思うし、初期のこれからグロースしていくぞというタイミングで、自分でも事業をやっている投資家としては1番応援しやすい時期に投資をしました。最も自分が貢献できるタイミングなのでアーリーフェーズで投資をしており、それが自分の役割と思ってます。最近は年1件くらいエンジェル投資をしてます。
宮田:すごいですね。年1件の投資の打率が高いですね。
端羽:うんうん、高い。
青柳:いや、5~6年前は、2ヵ月1回くらいのペースで投資をしてました。
端羽:私たちまだ、2ヵ月に1回の頃の投資ですね!まだまだ粗かった頃の時代(笑)
青柳:VCだとお金を預かっているので、そうはいかないと思いますが、良いスタートアップに出会った時だけ投資できるのがエンジェルの良さかなと思ってます。その私が今年投資したいと思った会社が2022年はクアンドでした。
下岡:めちゃくちゃ嬉しいです。創業5年経過するのですが、僕たちもプロダクトをやっていない2~3年があるので、投資いただいているタイミングとしては皆さんと同じ初期フェーズですね(笑)。
中立的な立場で経験に基づいたアドバイスを
青柳:ここでは、スタートアップがエンジェルに期待する役割というのと、逆に端羽さんと宮田さんはご自身でエンジェル投資も行っているのでどういうところを見ているかお話を伺いたいです。
端羽:もともと投資を受ける側としては個人投資家が好きじゃなかったんですよね。私はスタートアップ出身ではなく、バイアウトファンドの出身で、個人投資家がほとんど出てこないようなもっと大きな会社を買収して売却してというビジネスをやっていました。そのため、個人の投資家が出てきてややこしくなっている案件をよく見ていたし、ほんの一部だけ株を持っているせいで、会社をまるっと売却できないケースがよくあって、VCは仕事でやっているので、理屈が通るが、個人投資家は理屈が通じないと思っていたので、好きじゃなかったんです。
でも、起業家になって思ったのは、スタートアップや事業を実際にやった経験のある人の意見はすごく重要だなということ。ビザスクにとっては青柳さんが唯一の個人投資家だけど、自分が誰の意見が欲しいか、誰に一緒にこの船に乗ってほしいかを見てました。
もう1つは、上場の前にもう1ラウンド、エクイティ調達しようとしていたんです。当然、既存の投資家は出してくれる気があるから、もう待ってたよ!このときを!という感じだった。でも青柳さんに「絶対にデットで調達できるから、エクイティ調達しなくていい」と言ってもらって、デットで調達したんです。私たちは2015年にエクイティ調達をして、次のエクイティ調達をしないまま2020年に上場した。間の1ラウンドは飛ばしたので。それが良かったなと思うのは、上場をした後に、大きく資金調達をしてアメリカの会社を買収しにいくことになるんですけど、その時点でそこまで持ち分が薄まっていないこともあって、会社にとってとても意思決定がしやすい状態を作れたのはすごくよかった。資本政策において非常に中立な立場で意見をくれるのはエンジェル投資家のいい点だと思います。
下岡:VCのアドバイスとエンジェル投資家のアドバイスはどのように違いましたか?
端羽:アドバイスの内容そのものは同じだったかもしれないけど、自分が素直に受け取れるか受け取れないかという気持ちの問題があるかもしれないですね。VCはどこかで売却しないといけないという金融の目線が入るけど、エンジェルはピュアにアドバイスをくれるし、その人の経験を通じてアドバイスに付加価値が生まれるのが個人投資家なのだと思う。
青柳:宮田さんいかがでしょうか?
宮田:SmartHRはシードでのエンジェルはおらず、シリーズAのタイミングから入ってもらうようになりました。理由は、スタートアップとベンチャーキャピタルって7割くらいは利害関係一致しているけど、3割くらいは不一致になってしまうなと感じるところがあったからです。
例えば資金調達のバリエーションの話も、VCとしては安く投資したいので、既存株主などにとても相談するのが難しいネタだなと思うんです。M&Aのオファーがきた際も、相談しにいっても本心が見えないなと思う瞬間が少しあったりしました。そういうときみんなどうしてるの?って周りに聞いたら、そういうときはエンジェルに相談するんだよって言われてなるほどと思って、シリーズAで意図的にエンジェルに出資してもらうようにした。
実際に相談していても、自分のリターンをうんぬんというよりは、どちらかというと皆さんペイフォワード的な感じで出資をしてくださっているので、「自分の経済的には嬉しくないけどこうした方がいいよ」というアドバイスをくださる。そういうのを求めて、途中から意図的にエンジェル投資家の方にも入ってもらうようにしました。
本当に必要なアドバイスをくれるのは誰なのか
青柳:ところでクアンドは今回なぜこの3人をエンジェル投資家として入れようと思ったのですか?
下岡:時系列で話すと、僕たち初期は受託で稼いでいたのでシードラウンドは飛ばしているんです。その後、プレシリーズAで外部資金を調達しようとしたときに、福岡というのものあって、まわりにめちゃくちゃ資金調達をしている人がいるわけではなかった。地場のVCなどがいくつかあったんですが、VCって怖いってイメージがあって(笑)。
受託のお客さんが九州のオーナー企業である事が多く、そのオーナーや企業自体がお金を持っていたので、その人たちに出資してもらえばいいやという考えもありました。ちょうどそのときに端羽さんがTwitterでエンジェルしようかなというのをつぶやいたのをうちのCFOがみつけて速攻で連絡しました。
下岡:Twitterで連絡するのが早くて面談の機会はもたせてもらいました。そのときに端羽さんに地元の名士中心に集めようと思いますと言ったら、けっこう怒られて。「お金には色があるんだ。誰から集めてもいいものではないんだ」と。
端羽:下岡さんから最初相談をもらったときも、下岡さんは最初個人投資家ばかりで固めようとしていたので、本当にそうなの?あなたの事業の成長のために欲しいアドバイスは本当にこの人たちからもらえるのか?ということ、また九州から始めるということで、大きくなるタイミングでネームバリューが必要になることもあるから、イケてるVCからもお金をいれてもらった方がいいし、個人投資家にも入ってもらった方がいいし、もっとバランスのいい構成のほうがいいよとアドバイスをしたのを覚えています。どの目線でここから事業をのばしたいと思っているかを考えたときに、本当に必要な色なんですか、それは?という。
青柳:そうですよね、資本政策って会社の中でも何回かしか切れないカードなので、誰を味方につけたいか、誰を巻き込みたいか、というのは真剣に悩むテーマかなと。特にアーリーフェーズってそこを考えることが抜けがちかなって思ってます。シリーズB、Cになるとよりストラテジックな調達になるけど、実は早いタイミングでそれを考えられるようになるといいなと。そういう嗅覚は大事だなと思います。
下岡:端羽さんに言われてはっとして、確かにそうだなと思って、VC巡りを始めたんですね。そのアドバイス通りにALL STAR SAAS FUNDにリードをとってもらって、UBVにも入ってもらって投資ができたので、その結果をもって端羽さんにちゃんと連れてきましたよという感じで持って行ったんですが・・・
端羽:でも私本当にいい人で(笑)、もうこんなにいいVCからお金集まったら私のお金いらなくない?私なんか入れなくていいよという話を今度はしたんですね。せっかく宿題もってきました、と来てくれたのに。一度断ってしまったけれど、すぐに思い直して、ジョインすることになりました。
元々本業が忙しかったので、本当にエンジェルするかどうかというためらいもあったんです。実はまだ2件しかエンジェル投資していないんですよ。元々エンジェル投資したかったのは、自分達も新規事業をやる上でアンテナ高めたいというのがあったんですが、ビザスクがだんだんグローバルになっていくことも見えていた時期だったので。ただ、こんなにちゃんと素直に意見を聞いてやってきたよと言って来てくれた人に、自分の都合でやめますというのはよくないと思って、やっぱりやりますとちゃんと言いました。
下岡:ありがとうございます。なので最初のラウンドは端羽さんと地元名士が1名であとはもうVCという感じでした。そして今回のラウンドはB Dash Campで優勝させていただいた後のパーティーでたまたま同じテーブルで3人話した宮田さん・青柳さんにお願いをしました。宮田さんは以前から少し接点があったんですが、うまくあしらわれてまして(笑)。
宮田:あしらっていたわけではなく、当時は本当にお金がなかったんです。クアンドさんは本当にいいスタートアップだなと思っていたし、自分が九州出身だし、自分が九州でスタートアップやれるかというと本当に自信がなかったので、それをやっているのを素直に尊敬してめっちゃ応援したいなと思ってました。ただ、そのときお金がなかったんですよ。たまたま最近、クアンドさんから投資してくださいよと言われているときに、一緒に話の輪にいた先輩起業家の方が、宮田さんが投資するんだったら僕がお金を貸しましょうか?と言ってくれる人がいて、お金を借りてエンジェル投資することになりました(笑)。
こういう形で九州発のスタートアップが大きくなるところを見ることができるのは自分的にはすごい大きいことだったので、ちょっとムリをしてでも応援したいなと思ってこういう形になりました。もうひとつ言うと、青柳さんとSmartHR社の出会いもB Dash Campのピッチアリーナでした。僕らがプレゼンをして優勝したときの審査員に青柳さんがいて、そこが初めましてだったんです。今回も福岡で開催されたB Dash Camp で、優勝されるのを審査員側で見ていて、よりそこで自分達と重なって、応援したい気持ちがより強くなった。なので、あしらってたわけではないです(笑)
下岡:私の言葉が悪かったです(笑)
青柳:そういう縁は大事だなと思いますね。地域の縁もそうだし、勝負をかけてコンテストに出られて、迫力あるなと思ったのが投資をさせていただいたいなと思った理由です。実はB Dash Campのアフターパーティーの時間も当初他の予定があったんですけど、クアンドさんとどうしても話したい、ここで話さなかったらそれ以上の関係になることはないなと思って参加しました。
下岡:本当にみなさんとのご縁に感謝しています!ありがとうございます。これからも経験に基づくアドバイスをよろしくお願いします!
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